
タラブックスについて
タラブックスは、南インド、チェンナイにある出版社。2人の女性が経営する社員50人程の小規模な会社で、美しい手づくり絵本を数多く出版し、いくつかの絵本賞や児童文学賞を受賞しています。。
一番の特徴はシルクスクリーンで印刷する手づくり絵本です。職人さんたちが1枚1枚手で印刷していき、製本しています。そしてインドの少数民族や世界中のアーティストとのコラボレーションで作り出されるART作品のような絵本も大きな特徴です。
タラブックスの企画展へ
2017年12月に、板橋区立美術館で開催された「タラブックス」の企画展へ行ってきました。企画展では、タラブックスの絵本の原画や出版された本、インタビューや絵本の製作過程の映像等が展示されていました。
どの作品も素晴らしく、長い時間滞在してしまいましたが、タラブックスの世界観を存分に堪能できました。
インタビュー映像では、タラブックスの経営や働き方についての話も出ていて、そこには「魂が喜ぶ働き方」のモデルがありました。その心地よい働き方、人を大事にする経営手法が結果的に良質の本を出版することにつながり、世界中のファンを魅了しているのだと感じました。
2人の女性経営者と経営哲学
経営者であるギータ・ウォルフ氏とV・ギータ氏は、1990年代にフェミニズムの活動の中で出会ったとのこと。社会問題に対して敏感な感性を持っていた2人が共に運営してきた出版社は、設立当初から一貫した姿勢を通しているようです。
ここから「タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」(野瀬奈津子 矢萩多聞 松岡宏大 著)という本から、いくつか引用させていただきながら、お手本にしたいタラブックスの組織や理念についてまとめてみたいと思います。
「タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」より引用
ギータ氏とV・ギータ氏は本で社会変革を目指していると言ってもよいでしょう。弱者の立場を理解し、社会が公平になるようにとの信念を持ち、出版する本の企画から編集、製作、流通まで行っているのです。
タラブックスのあり方から見えてきた、「魂が喜ぶ働き方」のキーワードは
★急がない
★小規模で風通しの良い組織形態
★家族のような絆
★足るを知る
「急がない」
タラブックスの本、特にハンドメイド本は発注してから半年〜1年程かかるそうです。でも発注が増えたからといって規模を拡大することはせず、今いる人達でできる範囲の事をするというスタンスを徹底させているとのこと。
「タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」より引用
注文が増えたからといって「急がない」その背景には、ギータ氏の次のような信念も隠れているようです。
「タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」より引用
「小規模で風通しの良い組織形態」
タラブックスは会社の規模を大きくしないで敢えて小さい規模のままでいることを意識的に選択しています。そのことには大きな意味があるようです。
「タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」より引用
この文章からもわかるようにギータ氏とV・ギータ氏は、働いている人たちとの関係性を非常に大切にしています。一人一人と良質な関係性を保つために小規模経営を選んでいるのです。これは、規模を拡大すること、ビジネスを大きくすること、利益を追求することが当たり前のようになっている社会では真逆の価値観でしょう。
「家族のような絆」
従業員はまるで家族のような絆で結ばれているようです。風通しの良い組織で自分の役割をしっかりと認識し、心地よく働ける場所。”人を大切にする”という本来当たり前である価値観をまっすぐに実践している2人の女性経営者は、”魂が喜ぶ働く場”を20年以上継続しています。これからの時代古いようで新しい組織のあり方です。
「足るを知る」
「タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」より引用
規模を小さいままにするということは、利益もあまり増えません。なので、長く勤めても給与はあまり上がらないということになります。今の日本の状況を考えると、給与が今後右肩上がりに上がることはなくなっていくでしょう。どこかで「これで十分」という生活スタイルを確立し、給与はあまり増えないという条件の元、人生のファイナンスプランを立てていれば、後で大変な事態になることはないでしょう。
「足るを知る」という古い格言があります。人口も減り、需要と供給が縮む世界で、これまでの消費主義的な暮らしから「今ある物だけで充足する暮らし」へダウンシフトすることで、利益追求の社会構造から脱して、心地よい働き方を実現する道へつながる道をみつけたいですね。
最後にギータ氏の言葉から
「タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる」より引用